沖縄県政の刷新を求める会

県警検問控訴断念慰謝料返還訴訟

県警検問控訴断念慰謝料返還訴状訴状

訴状

請求の趣旨

  1. 被告知事は、翁長雄志に対し、沖縄県に対する損害賠償として同県に対し、金319,849円及びこれに対する訴状送達の日から支払い済みまで年5分の割合による金員を支私うよう請求せよ。
  2. 訴訟費用は被告知事の負担とする。

との判決を求める

 

請求の原因

第1 当事者

  1. 原告ら
    原告らは、いずれも沖縄県に居住し、住民票を有する沖縄県民である。原告らは共同して、沖縄県知事である翁長雄志による後述の控訴の断念につき、裁量の逸脱ないし権利の濫用にょる違法があり、これによって支払われた慰謝料等の支出が違法な公金の支出であるとした住民監査請求を行い、沖縄県監査委員によって却下された。【甲1】
  2. 被告
    被告は、地方自治法242条の2第1項第4号にいう執行機関としての沖縄県知事であり、不法行為等によって同県に損害が生じたときは、加害者に対して、損害賠償の請求をする権限を有する(法242条の3第1項243条の2第3項・4項)。
  3. 請求の相手方
    本件訴訟は、同県の違法な支出によって同県に損害が生じたことを問うものであり、上記違法な支出の責任を負うべき相手方は、同県の知事でもある個人としての翁長雄志である。被告は、同県の執行機関として、上記違法支出の責任を負うべき個人としての翁長雄志に対して、請求の趣旨記載の金員につき損害賠償の請求をしなければならない。

第2 事実の経過

  1. 沖縄県の敗訴判決
     沖縄県東村高江の米軍北部訓練場ヘリパッド(着陸帯)建設工事の現場近くの県道で平成28年11月3日、抗議する市民のもとに向かっていた沖縄弁護士会所属の三宅俊治弁護士(以下「三宅弁護士」という。)が警察官に車両の通行を2時間以上制止されたこと等によって「精神的苦痛を被った」として県に損害賠償を求めた訴訟で、那覇地裁 (森鍵一裁判長)は、平成30年1月16日、警察官の行為に違法があったと認め県に30万円の支払いを命じる判決 (以下「本件判決」という。)を言い渡した。【甲2】
     県側は、頻発していた北部訓練場での工事車両に対する危険かつ違法な抗議活 動を防止するための必要最小限度の適法・適切な措置であり、三宅弁護士を抗議活動の参加者と判断しため「工事を妨害するために犯罪行為に至る蓋然性は高かった」と主張していたが、判決は、単に抗議参加者であることを理由に犯罪行為に及ぶと判断することは「合理性を欠く」と指摘し、三宅俊治弁護士に対する県警の制止行為とビデオカメラによる撮影について「いずれも原告の自由を制約するものであり、警察官職務執行法や警察法によっても正当化することができない」としていた。
  2. 控訴権不行使
     沖縄県警は、本判決を不服として控訴する意向を強く持ち【甲5】、監察課訟務係の國仲嘉一警部の起案による「損害賠償請求の控訴に伴う議案提出について(案)」につき、筒井沖縄県警本部長、阿波連公安委員長らの決済を受け、平成30年第2回臨時会において乙第1号議案として提出し、沖縄県議会の議決を得るべく準備を整えていた【甲4】。
     しかしながら、沖縄県知事である翁長雄志は、控訴しないことを決定し、当該議案を県議会に提出しなかったことから、本判決は、控訴期間の経過によって確定するに至った。
  3. 財務会計上の行為
     沖縄県は、控訴権不行使によって確定した本判決に基づき、平成30年2月28日、一般会計から警察管理費・警察本部費の運営活動費として慰謝料30万円及びこれに対する遅延損害金を併せて金319,849円を支出し、三宅弁護士から指定された銀行日座に振り込んでこれを支払った。【甲6~8】

第3 控訴権不行使の違法

  1. 違法判断の枠組み
     普通地方公共団体を被告とする敗訴半」決に対する控訴の提起は、地方自治法149条1項9号の首長の事務であると同時に同法96条1項13号の議決行為であるが、控訴権の不行使については議会の議決を受ける必要はなく、首長の裁量的判断によって決定することができる。
     そのため、控訴提起にかかる首長の判断は、原則として違法とはならないが、それが普通地方公共団体に対して損害賠償金等の債務の負担といった不利益をもたらすものである以上、裁量権の逸脱又は権限の濫用がある場合には違法となるといわざるをえない。
  2. 判決内容の不当性
     本件判決は、警察官職務執行法(以下「警職法」という。)5条による制止行為の要件である「犯罪がまさに行なわれようとする」場合における「まさに」につき、これを「社会通念上犯罪の危険性が切迫していると考えられる場合であれば、犯罪がまさに行なわれようとする場合に当たる」とする県側の主張を採用せず、「相当程度に具体的な犯罪が発生することが客観的に明らかなことをいう」と解したうえ、当該区間において抗議参加者による犯罪行為(ヘリパッド移設工事の業務を妨害するため、①沖縄県道70線において車両を低速走行させる、②道路上に複数の車両を放置し、車両間の隙間に座り込んで道路を封鎖する、③工事車両の前に飛び出したり、立ちふさがる、④工事車両の下に座り込む、⑤工事車両の荷台にしがみつく、⑥道路上において無許可の集会やデモを行うといった威力業務妨害)の蓋然性が比較的高かったことや対応した警察官において三宅弁護士が抗議参加者である蓋然性があると認め、同人による犯罪が行なわれるおそれを否定することができないと判断したことに一応の合理性があると認めている。
     ところが、犯罪行為に及ぶことのない抗議参加者も相当数いたことを理由に、「相当程度に具体的な犯罪が発生することが客観的に明らかであるJというためには、その者が抗議参加者であると合理的に判断される状況が存在するだけでは足りず、「不審な言動等の徴表によって、犯罪行為に及ぶ具体的蓋然性が認められることが必要である」とした。
     更に、警察官が対応した三宅弁護士が、自身が弁護士であることを伝えず、弁護士バッジを示すなどして自身の職業を明かさず、警察官からの質問への回答を拒否し、逆に「車両を止める根拠は何ですか。行き先や理由を聞く根拠は何ですか」と質問し、デジタルカメラで警察官を撮影するなどの警察の検間に非協力的ないし敵対的かつ妨害的な言動があったにもかかわらず、その言動や服装がスーツ姿であったことから、犯罪行為に及ばない者であることを客観的に判断しえたと認定し、そうしなかった警察官の判断を不合埋なものであると決めつけ、当該車両を長時間留め置いたことを違法な措置だとしたものであった。【甲2】
     果たして、抗議参加者による執拗かつ組織的な犯罪行為が頻繁に行なわれている現場において、抗議参加者の言動と服装だけで、犯罪行為に及ぶことのない者を客観的に区別することができるだろうか。抗議活動には全国からプロ市民と呼ばれる専従活動家や過激派が多数参集しており、妨害の犯罪行為は組織的に統制されており、情宣も含めて計画的かつ戦略的なものであることに照らせば、大いに疑間の沸くところである。執拗かつ組織的な犯罪行為と向き合っている警備の現場に対し、こうした判断を要求することの不当は明らかであるといわざるを得ない。
  3. 警職法等の解釈に係る判断について
     本件では法令である警職法5条の解釈が重要な争点となっている。その解釈如何は、沖縄県警察だけでなく全国の警察による検問や職務質問等の警備活動のあり方に大きな影響を及ぼすものであることは見易い。
     そもそも沖縄県知事は、県内の警察警備活動を沖縄県警に任せており、その活動のあり方に関わる警職法の解釈については、所轄の沖縄県警の判断と意向を尊重するのが合理的であり、全国の警察による警備活動のあり方を規定する法令解釈とその運用の統一という法治主義の観点(法治の要請は県知事も遵守すべきものである)からも、これと異なる判断を行う場合は、そのことを正当化しうる別の客観的かつ合理的な理由がなければならないはずである。
     沖縄県警は、本件判決が警職法5条を限定的に解釈して警察官の行為を違法だとし、対応した警察官の証言を退けた本件判決に対して強く反撥しており、警察本部警務部監察訟務係国仲嘉一警部が起案した「損害賠償請求事件(平成28年(ワ)第893号)に係る控訴について(案)」においても、事実誤認と法令解釈の誤りを理由として控訴をすることについて、筒井本部長、中嶋警務部長以下の決済を得【甲5】、控訴につき議会の議決を得るべく準備万端整えていた【甲4】。
  4. 控訴権不行使の理由ないし動機
     沖縄県知事である翁長雄志は、沖縄県を敗訴させた本件判決につき、所轄の沖縄県警の意向及び判断を退けてまでも控訴権を行使しないことについて何ら客観的ないし合理的な理由を述べるところがないため、控訴審の判断を仰ぐことなく本件判決を確定させた理由ないし動機は、翁長雄志を支援している「オール沖縄会議」が関係している反基地運動に対する政治的思惑や人間関係に基づくものではないかと推測され、もって情実や癒着によって県政を歪めているという批判を招いている。
  5. 小括
     本件判決はその事実認定及び法令解釈において不当があり、控訴審において破棄される蓋然性が認められることに加え、そこで警職法及び警察法の解釈が重要な争点になっている以上、法令の統一的解釈・運用の観点から所轄の沖縄県警の意向ないし判断を尊重すべきところ、同県警は控訴の意向と判断を明確に表明していたのであり、沖縄県知事としての翁長雄志はこれを退けることを正当化しうる客観的かつ合理的な理由を何ら示さないまま、敢えて控訴をせずに敗訴判決を確定させるという不作為は、沖縄県知事に付与された訴訟遂行に関する権限にかかる裁量権の範囲を逸脱し、濫用にわたる違法があるといわざるをえない。

第4 支出行為の違法と沖縄県の損害

  1. 違法性の承継
     執行機関又は職員の違法な財務会計上の行為又は怠る事実が違法となるのは、「単にそれ自体が直接法令に違反する場合だけではなく、その原因となる行為が法令に違反し許されない場合の財務会計上の行為もまた違法になるのである」(最高裁昭和52年7月13日大法廷判決・民集31巻4号533頁、最高裁昭和62年9月12日第1小法廷判決判示1171号62頁)。
     また、「地方公共団体の長は、財務会計行為を行うに当たり、その原因となっている自己の権限に属する非財務会計行為に違法事由が存するか否かを審査、調査しなければならず、自己の権限に属する原因行為に違法事由があるのにもかかわらず、それに対する是正措置を執らずに財務会計行為に及んだ場合には、当該貝財務会計行為は、財務会計法規上の義務である誠実執行義務に違反し、違法になると解すべきであり、この埋は、原因行為が不作為であったとしても異ならないというべきである」(大阪地裁平成19年5月22日判決・判例地方自治299号74頁)。
     因みに、原因行為が非財務会計行為であっても、それが不法行為に該当する場合、これにより地方公共団体に生じた損害を賠償する責任を認めた裁判例として、福岡地裁平成17年11月4日判決裁判所HP、京都地裁平成19年12月26日裁判所HPなどがある。
  2. 支出行為の違法
     翁長知事は、訴訟遂行に関する知事の裁量権を逸脱・濫用して控訴をしなかったことによって沖縄県に300,000円及び遅延損害金の支払いを命じる本件判決を違法に確定させたのであり、その違法行為を直接の原因とする319,849円の支出行為もまた違法性を帯びることになる。
  3. 沖縄県が蒙った損害
     翁長知事が本件判決を控訴しておれば、本件が破棄された蓋然性が高く、その場合には、沖縄県は前記金額を支出せずに済んだのであるから、これをもって翁長知事の控訴権不行使に基づく違法な支出行為よって沖縄県が被った損害だというべきである。

第5 住民監査請求の結果について

  1. 住民監査請求の結果
     原告らは、沖縄県民であるが、平成30年2月22日付けにおいて、沖縄県知事翁長雄志が、沖縄県警の意見を退けて控訴を断念し、これによって確定した一審判決に従って、損害賠償金等319,849円を支払ったことは知事に委ねられた裁量の範囲を逸脱するもので違法であると主張し、沖縄県は翁長雄志知事に対して損害賠償を求めるべきだとする沖縄県職員措置請求(住民監査請求)を行なったが、沖縄県監査委員は、上記請求につき、却下の決定を行い、平成30年4月17日付「沖縄県職員措置請求について(通知)」【甲1】にて、原告らに通知した。
  2. 却下理由の不当性
     沖縄県監査委員は、却下決定の判断の理由として「訴訟遂行の判断はいわゆる行政行為には当たらないとされており、裁量とは行政行為を判断するにあたって論じられるものであることから、裁量の範囲を逸脱しているとの請求人の主張は認められない。」としている【甲1】 。
     行政行為の概念は、多義的であるため、沖縄県監査委員が述べようとしていることは必ずしも明らかではない。訴訟遂行の事務も地方自治法によって首長に付与された権限であることに照らせば、それが行政の行為であることは自明である。若しくは、それを行政処分と同義の概念として用いているものと捉えるならば、大分地裁昭58年1月24日判決行政事件裁判例集34巻1号71頁を挙げて反論することができる。
     同判決は、公金支出の原因行為である卸売市場法の卸売市場改正計画の違法性が問題になった住民訴訟であるが、原告の主張を被告市長の政策決定自体をとらえて違法と主張するものであると捉えたうえ、「政策の選択決定は被告市長の裁量権に属する事項であるから、同被告が裁量権の範囲を逸脱しない限 り、政策の当否はともかく、違法の問題は生じない」としたものである。これは、行政処分ではない政策の選択決定についても裁量があることを前提とするものであり、その逸脱の有無が司法審査の対象となることを認めたものである。原因行為としての都市計画の違法性が問題となった東京高裁平成2年2月1日判決(東京高等裁判所(民事)判決時報41巻1~4号 7頁)についても同様である。
     沖縄県を被告とする訴訟において敗訴判決 を受けた場合における控訴権の不行使は、沖縄県知事に付与された権限の不行使であり、沖縄県の行政の運用に関する政策決定の一つであり、原則として沖縄県知事の裁量に委ねられているが、裁量の範囲を逸脱し、濫用した場合には違法となりうるものであり、上記監査委員会の却下理由が失当であることは明らかである。

第6 まとめ
 よって、原告らは、地方自治法242条の2第1項4号に基づき、沖縄県の執行機関である被告知事に、上記違法支出に係る不法行為責任を負うべき翁長雄志に対して、損害賠償として金319,849円及びこれに対する不法行為の後であることが明らかな本訴状送達の日から支払い済みまで、民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払の請求をなすことの義務付けを求めて本訴に及ぶ次第である。

証拠方法

  1. 甲第1 沖縄県職員措置請求書(通知)
  2. 甲第2 判決正本
  3. 甲第3 公文書開示決定通知書
  4. 甲第4 起案用紙「損害賠償請求事件の控訴に伴う議案提出について(案)」
  5. 甲第5 起案用紙「損害賠償請求事件(平成28年(ワ)第893号)に係る控訴について(案)」
  6. 甲第6 支出調書
  7. 甲第7 予算執行伺
  8. 甲第8 支出負担行為書

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