沖縄県政の刷新を求める会

県警検問控訴断念慰謝料返還訴訟 控訴

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控訴状

損害賠償命令請求住民訴訟控訴事件

 上記当事者間の那覇地方裁判所平成30年(行ウ)第5号損害賠償命令請求住民訴訟事件について、平成31年3月15日判決の言渡があり、同日判決正本の送達を受けたが、全部不服であるから控訴を提起する。

原判決の表示

主文

  1. 原告らの請求を棄却する。
  2. 訴訟費用は原告らの負担とする。

事実及び理由

省略

控訴の趣旨

  1. 原判決を取り消す。
  2. 被控訴人は亡翁長雄志相続人に対し、31万9849円及びこれに対する平成30年6月29日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払うよう請求せよ。
  3. 訴訟費用は1審、2審とも被控訴人の負担とするとの判決並びに仮執行の宣言を求める。

控訴の理由

 控訴人が本訴の請求原因として主張する事実は原審で陳述したとおりである。しかしながら原判決が、被控訴人の主張を認めたのは事実誤認であり取消を免れないものである。
 詳細は追って準備書面を提出する。

控訴理由書

  1. 原判決の概要
     原判決は控訴人ら似下「一審原告ら」という。)の主張を、①本件不作為自体が違法な財務会計行為に当たるとの構成〔以下「請求原因①」という。)及び②財務会計行為とは本件支出を指すところ、本件支出は、その原因行為である本件不作為の違法を承継しているとの構成(以下「請求原因②」という。)を選択的に主張しているものとし、請求原因①については、本件不作為が本件支出と一体のものであるということはできず、非財務会計行為を対象とするものだとして不適法だとし、請求原因②については、第1に翁長県知事による本件不作為が法の採用する執行機関の多元主義に違背し、その趣旨を潜脱するものであり、所轄権限濫用の違法があることは明らかだという一審原告らの主張に対しては、知事が所定の権限に基づいて行なった議案提出の当否の判断が、執行機関である公安委員会の考えに沿わないことをもって知事の裁量権の濫用又は逸脱があるということにならないとし、第2に本件不作為が直ちに本件支出に結びっいたということができないため、本件不作為の適法・違法が本件支出に承継されることはないなどとし、もって請求原因②にかかる請求に理由がないとするものであった。
  2. 請求原因②の第1(執行の多元主義違反)について
     原判決における最大の問題点は、法が採用している「執行機関の多元主義」に関する理解の誤りにある。
     原判決は、執行機関の多元主義にかかる一審原告らの主張を、次のように要約している。「法は、地方行政にかかる基本的組織原理として執行機関の多元性を採用している。これは長から独立した権限を有する執行機関である委員会を複数配置し、これら複数の執行機関を長の下に系統的に構成して一体的に行政機能を発揮すると共に、政治的中立ないし専門性の要請から、いわゆる行政委員会に独立した権限を委託することにより、一つの執行機関への権限集中を避けて権限を分掌させ、各々が独立して事務処理を行うことで、民主的かつ中立公平な行政が行なわれることを期待するものである。法は、予算の調整・執行、議案の提出、地方税の賦課徴収、決算を議会の認定に付することといった権限について、委員会等の所轄事項であっても、委員会等ではなく所轄権限を有する長の権限としているが(法180条の6)、これは、議決権限あるいは広く住民一般との関係における管理・執行権限を統一的に行使させ、財政運営を一元的に処理することにより、地方公共団体の一体性を確保しようとするものであり、こうした多元的な執行機関による行政機能を一体的に発揮するためには、執行機関相互の連絡を図って権限が行使されなければならないことは必然であるから、長は、所轄権限の行使に当たり、各執行機関が長から独立して所管する行政部門の意思決定を尊重し、特段の事情がない限り、これに従う厩きである」。
     原判決は、法が執行機関の多元主義を採用していることを認めながら、法138条2項が、「普通地方公共団体の執行機関は、普通地方公共団体の長の所轄の下に、執行機関相互の連絡を図り、すべて、一体として、行政機能を発揮するようにしなければならない。.「と定めていることを強調し、「執行機関の分立は、行政の民主化の要請や、行政執行上の公正妥当を期するためのものであって、最終的には、同一の地方公共団体の作用として矛盾等が生じないよう、相互に連絡を取りながら執行すべきことが求められているといえるし、法が、長に所轄権限と共に委員会及び委員に対する総合的調整権を与えていることからすると、法は長が行使することを通じて、行政の一体性を図ることが期待されている。」とする。
     そこまではよい。一審原告らも首肯する。問題はそこからである。
     原判決は、「法は、長に所轄権限及び総合的調整権を与えることで、行政機能の一体性を確保しようとしているから、知事は、他の執行機関の所轄事項に関する議案についても、県の長としての観点から、これを判断し決定する権限を有しているということができる。」とし、所轄権限及び総合的調整権をもって執行委員会に委ねられた専権事項の実質的判断に長の判断を容像させることを認める論理を導いている。
     専門性ないし中立性を要する行政の執行部門を各委員会に分属させる「執行機関の多元主義」の基本原則は、担当部門に関する実質的判断を各委員会の判断に委ね、長による政治的判断から切り離すという趣旨である。
     長の所轄権限及び総合的調整権は、そのことを前提にしたうえでの、形式的なものであり、委員会に委ねられた事項に関する判断を、長の政治的判断によって否定することを認めるものではない。いわば行政の一体性の外観を保持するための象徴的行為であり、委任事項に関する実質的権限を長に留保するものではない。
     原判決は、本件において、公安委員会が控訴すべきだと考えていたことは明らかだとする。しかし、長の政治的判断をもって、公安委員会が示している「控訴すべし」の判断を覆すことを、形式的な所轄権限に過ぎない長の議案の提出権の行使をもって認めてしまっているのである。これは大いなる矛盾であり、「執行機関の多元主義」の趣旨に反するものである。原判決の失当は明らかである。
  3. 請求の原因②(違法性の承継)について
     本件不作為は、法の基本原理である「執行機関の多元主義」の要請するところに真っ向から反する重大な違法を孕むものである。そして、その重大な違法は、不当な判決の確定につながり、これに基づいて沖縄県は不当な支出を強いられたのである。法の基本原理に違反する重大な違法が、本件支出行為に承継されるべきことは明らかである。
  4. 請求原因①(本件不作為自体が則務会計行為に該当するか)について
     原判決は、本件不作為自体の財務会計行為性を否定するが、その理由は、議案を提出しても議会の同意が得られるか不確定であり、控訴しても判決が覆るかどうか不確.定であることに尽きる。
     過去、沖縄県議会が控訴にかかる議案を否決したことはない(あるというのであれば、被控訴人において立証すべきであろう).訴訟となった事案においては、司法の判断を仰ぐのが原則であり、司法判断は三審制をもって確定する建前であり、その経過にすぎない一審判決をもってそれを相当とするには特段の事情(担当委員会が控訴しない意向を固めた等)がなければならないが、当時の翁長知事はそうした特別の事情を何ら示していない。
     更に、控訴審の判断の結果については、逆転勝訴については不確定な要素があったことは認めるものの、それにもかかわらず公安委員会は控訴すべきとしていたのであり、少なくとも本件では、逆転勝訴の相当な可能性があったことを否定できないことは一審で主張したとおりである。
     逆転勝訴の蓋然性については、本来、損害賠償請求の成否にかかる実体判断事項であり、間口の訴訟要件の判断としては、逆転する相当な口f能性をもって十分であると思料する。

以上


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